サプライチェーン関連
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サプライチェーン関連
author : 佐々木 太郎
目次
ソフトウェア開発の歴史を紐解くと、最初はスクラッチ開発とよばれる、ゼロから要件を定義してソフトウェアを組んでいくことから始まった。そこから、様々な企業で同じような仕組みをつくっているならばそれをパッケージ化して販売しよう、ということで、パッケージ・ソフトウェアが生まれてくる。パッケージ・ソフトウェアの代表格がERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)で、筆者も2000年代にSAPやOracleなどのERPの導入プロジェクトに関わっていた。パッケージ・ソフトウェアは、様々な企業の共通要件を拾い上げ一般化したものであるが、もちろん個社の要件があり、その個社要件にいかに対応していくか、が課題である。個社要件に対応するためにカスタマイズ開発を行うが、これによって導入費用が莫大になるプロジェクトが多い。そこに対して、既存の業務にソフトウェアを合わせるのではなく、パッケージ・ソフトウェアに業務を合わせよう、そうすることによって業務プロセス自体を変革しよう、という活動がBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)だ。パッケージ・ソフトウェアは、様々な企業のベスト・プラクティスを集約したソフトウェアだから、それに業務を合わせれば業務プロセスがベスト・プラクティスに近づく、という考え方である。
パッケージ・ソフトウェアは、一般的に、自社で物理的にサーバをたて、そのサーバにインストールするソフトウェア(オンプレミス)である。2000年代後半から、ブロードバンド・インターネットが整備されるにともない、クラウド・コンピューティングが盛り上がる。これは、インターネットで接続したクラウド環境上にソフトウェアを置き、インターネット経由でソフトウェアを利用するという方法だ。そのようなソフトウェアをSaaS(Software as a Service)と呼ぶ。代表的なのは、Salesforce.comで、SFA(Salesforce Automation)、CRM(Customer Relationship Management)のソフトウェアとしてグローバルで圧倒的な存在感を示しており、ERPパッケージベンダーのSAPやOracleも脱オンプレミス、SaaS化を急いでいる。
なぜいまSaaSが注目されるか?SaaSにはさまざまなメリットがあるが、筆者は以下の3点に注目したい①先行投資を抑えることができる、②常に最新のソフトウェアを利用することができる、③運用定着サポートまで料金に含まれる。それぞれの点について、以下説明する。
スクラッチ開発及びパッケージ開発では、オンプレミスでサーバを立てることが前提となり、高額なサーバの購入、サーバルームの確保、サーバ管理要員の確保などが必要になる。最近ではクラウド・サーバを利用したスクラッチ開発やパッケージ開発もあるが、それでもクラウド・サーバの運用管理リソースは必要となる。それに対して、SaaSを利用すると、IDとパスワードを発行するだけで、その場で利用開始することができ、費用は月額料金のみとなる。
スクラッチ開発やパッケージ開発では、一度システムを導入したのちに新しい技術が出てきた場合、それを取り込むことが難しい。パッケージ・ソフトウェアの場合、バージョンアップによって最新技術を取り込むこともできるが、バージョンアップには莫大な費用が掛かるのが一般的だ。一方SaaSの場合、毎月のように機能更新を行うケースが多い。また、パフォーマンスを改善するためのチューニングなども日々行っているため、使い勝手が日に日によくなる。
SaaSを提供している会社では、カスタマーサクセス、という言葉がよくつかわれている。これは、ソフトウェアを提供するだけでなく、ユーザーがソフトウェアを使いこなすところまでサポートしなければ、ソフトウェアを提供している意味がないという考えの現れだ。スクラッチ開発やパッケージ・ソフトウェアが売り切りのモデル(開発費の10%程度を請求して保守を行う場合もある、ただし、ユーザーのソフトウェア利用をサポートするものではない)であるのに対して、実はここが大きな違いとなっている。
それでは、ロジスティクスの世界にSaaSはどのように浸透してきているだろうか?筆者は2015年ころからロジスティクスの世界に足を踏みいれているが、ほかの産業ではあたりまえになってきていたクラウド・コンピューティングやSaaSという考え方も、2015年時点ではまだロジスティクスの世界では浸透していなかった。当時、自社車両を数百台持つような大手の運送会社に提案に行った際に、「うちではオンプレミスが基本なのですが、オンプレミス化できませんか?」と言われたのをよく覚えている。そこから5年弱たった今日現在、ロジスティクスの世界でもSaaSが大分受け入れられてきたように思う。2015年ころから、WMS(Warehouse Management System)やTMS(Transportation Management System)をSaaSで提供するベンチャーが現れだしたこと、ほかの伝統的な産業、たとえば銀行業などでクラウド・コンピューティングの採用が2017年ころから報道されるようになったことが、ロジスティクスという伝統的産業でもSaaSが受け入れられる土壌を醸成してきた。進んだ企業では、基幹システムはオンプレミスで、サブシステムはSaaSを利用し、サブシステムに労力をかけずに常に最新のテクノロジーを享受するという考え方をするようになってきている。前述のようにSaaSを利用することにより、導入コストを最小化し、最新のソフトウェアを取り入れることができるため、SaaS利用の流れが加速することにより、アナログで属人的だったロジスティクスのデジタル化が促進される機運が高まってきている。
Hacobu代表取締役社長CEO。アクセンチュア株式会社、博報堂コンサルティングを経て、米国留学。卒業後、ブーズアンドカンパニーのクリーブランドオフィス・東京オフィスで勤務後、ルイヴィトンジャパンの事業開発を経てグロッシーボックスジャパンを創業。ローンチ後9ヶ月で単月黒字化、初年度通年黒字化(その後アイスタイルが買収)。食のキュレーションEC&店舗「FRESCA」を創業した後、B to B物流業界の現状を目の当たりにする出来事があり、物流業界の変革を志して株式会社Hacobuを創業。
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