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専門家コラム

author : 小野塚征志

AI時代の物流革命「ロジスティクス 4.0」

「ロジスティクス 4.0」とは物流の世界において現在進行形で起きている、新しいイノベーションです。IoT、AI、ロボティクスといった次世代テクノロジーの進化が、今物流の世界を大きく変えようとしています。すでに自動運転トラックの実証実験は世界各地で実施され、人的リソースに依存しないビジネスモデルに変わろうとしているところです。

ロジスティクス の革新の変遷

ロジスティクス とは元々は軍事用語で、軍事活動に必要な物質を補給・輸送する機能を意味していました。19世紀後半になると、ロジスティクス は軍事活動だけではなく、経済活動においての物流という意味で用いられるようになりました。

古来からのロジスティクス が大きく変化したのが20世紀。蒸気機関車や蒸気船そしてトラックが登場したことにより、大量の物資を遠隔地まで効率的に運ぶことが可能になりました。これがロジスティクス 1.0です。1950年代になるとさらに、人力で行なっていた荷役現場にフォークリフトが普及し、海上輸送のコンテナ化が実現し、ロジスティクス 2.0を代表する「海陸一貫輸送」の時代になります。

1970年代になると、第三の革新である「管理・処理のシステム化」がすすみます。WMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)といった物流管理システムの導入や国際間の輸送における手続きの電子化も開始されました。

そして現在進みつつあるのロジスティクス 4.0は「省人化」と「標準化」による「物流の装置産業化」という進化です。

ロジスティクス 4.0の中身

省人化

省人化とはロジスティクスの領域において、「人の操作や判断」の必要が減少することを指します。特に自動運転による「トラック輸送の省人化」は企業の物流コストを大幅に下げることに直結するため、世界中で自動運転トラックの実用化にむけた取り組みが進められています。

日本をはじめとする先進国では長距離ドライバーの過重労働と人手不足が深刻化しており、無人運転トラックが実現することで、この2つの問題の解消に繋がると期待されています。

また、物流拠点から最終目的地に届けるまでのラストワンマイルの配送においてもドローンや自走式配達ロボットの実用化も実験が進められています。

保管・荷役については1960年代後半に自動倉庫が普及していますが、さらに棚搬送型ロボットやピッキングロボット、無人フォークリフトも登場しています。

さらにこのような最先端の物流システムやロボットの導入・運用支援を行う物流システムインテグレーターも注目され、今後ますます活況していく分野だと思われます。

標準化

「省人化」を「人の仕事を機械に置き換えるイノベーション」とすると、「標準化」は「省人化を実現するために必要なリソースをシェアリングエコノミーによって最小化するイノベーション」と言えます。

ロジスティクス 4.0による標準化には以下の3つの種類があります。

垂直統合による標準化

調達・生産から小売・消費までの物流機能がつながること。

水平統合による標準化

企業の垣根を超えて、物流・情報が共有される。荷主と物流リソースが広くマッチングされる。

物流の範囲を超えた標準化

交通・気象・災害といった物流を超えたプラットフォームが形成される。

IoTの進化により、本来個々に有していた機能や情報が見える化され、他者と共有されるようになることで、物流版のシェアリングエコノミーの実現が可能になっていくのです。

ロジスティクス 4.0により物流業界はどう変化しているか

省人化と標準化が進んだ先には、物流業界はより装置産業としての役割が強くなっていくと考えられます。「運ぶ」「荷役する」「届ける」といったモノの流れから人の介在がなくなり、社会的なインフラとしての機能が強化されることによって、新たな物流世界にトランスフォーメーションしていくでしょう。

物流の装置産業化が進むと、今まで以上に相応の資本力が必要になります。自動運転トラックやマッチングシステムなどの次世代物流システムに戦略的に投資して、他者より優れたビジネスモデルを確立し、「ロジスティクスプラットフォーマー」となった企業だけが生き残ります。どの企業・システムがインフラとして勝ち残るのかという点はまだまだ誰も予測できません。

ロジスティクス プラットフォーマーとしての役割

ロジスティクス4.0の後は、物流を担うプレイヤーは二極化すると予測されます。
ロジスティクス プラットフォーマーとして、スケールメリットの最大化を図り、大局的見地から寡占的地位を獲得する企業と、それ以外です。

Amazonは200以上の物流センターを自社運営しており、近い将来世界最大の物流会社になる可能性が十分にあります。

Amazonが提供する企業向けクラウドインフラサービス(AWS)は自社のEC事業のために使われる巨大サーバーの空きスペースを外販して、高収益をあげています。Amazonの持つ巨大でリアルな物流ネットワークも同様に外販することになれば、既存の物流会社以上のインパクトがあると言われています。

自社の貨物があること、本業の収益があることを生かした荷主の物流ビジネスはニトリも展開を始めていますが、最悪失敗しても自社で活用すればいいため、投資は無駄にはなりません。

それ以外の会社はさらに物流機能のアウトソーシングが進み、自社だけの属人的な管理ではなく、標準的な物流管理を受け入れるようになるでしょう。

ユーザーから遠い物流会社はデジタルマッチングなどでプラットフォーマーから仕事を受けるしかなくなり、通信事業者のように土管化し、規格化された物流サービスのみを提供する存在になる可能性があります。

物流+αのオペレーションアウトソーサー

ロジスティクスプラットフォーマーとしてスケールメリットを最大限得る戦略は理にかなっていますが、だからと言って全てがスケール面で競わなければならない訳ではありません。特定の荷主に対して、「物流以外のオペレーションサービスを提供する」ことができれば、独自の存在価値を発揮することができます。

例えば大手総合物流会社の鴻池運輸はクライアントである食品メーカーの製造業務(原料の調合・容器へのラベルの圧着・製品パッケージングなど)から物流業務までを一貫して受託しています。近鉄エクスプレスでは物流以外にも輸出入者代行サービスや輸出入の購買代行サービスなども行なっています。

このように荷主の+αのニーズに対応することで、自社の生き残りをかけた独自の価値の創出につなげている企業もたくさんあります。

未来のロジスティクスとは

ロジスティクス は今後さらなる変化を遂げ、モノの動き=サプライチェーンだけでなく、情報の動き=デマンドチェーンも支える存在になると思われます。そしてより宅配便のように規格化されたLogistics as a Serviceが作られていく事でしょう。

そのような現状で、企業として未来を「想像」し、戦略的な投資を進めていったとしても、業界の動向はまだまだどうなるかわかりません。しかし慎重を期して動かなければ、他の企業の後追いを続けるしかありません。

このようなパラダイムシフト的な変化が起きつつある中で、企業としては自ら未来を「想像」し、仲間と共に「創造」していく共創の考え方が求められています。自分たちの創造する世界観を示し、共感してくれる仲間を集めることが、ロジスティクス4.0時代のキーとなると言えるでしょう。これからの私たちには「意思を持って判断することの力量」が問われていると言えます。

著者プロフィール / 小野塚征志

ローランド・ベルガー プリンシパル
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て、2007年に欧州系戦略コンサルティングファームのローランド・ベルガーに参画。2015年より現職。ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業戦略、M&A戦略、事業再構築、構造改革等をはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開。

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