COLUMN
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執筆者:野田和伸

With/Afterコロナ時代の物流業界はどう変わるのか?

AfterコロナというよりWithコロナと捉えるべき

新型コロナウイルスの影響で世界中の各国が厳しい入国規制や自宅待機を強制・要請することにより、人々の生活や行動は大きな変容を遂げた。テレワークやオンライン教育、オンライン医療が普及していき、無意識に密閉・密集・密接の3密行動を避けるように行動が変わった。この行動変容は、コロナウイルスの収束後の「Afterコロナ」においても元には戻らずに長く永続すると考えられ、この行動変容を長期的な「Withコロナ」と捉えて、経済活動を再定義するチャンスと捉えるべきである。

空っぽの旅客機が物流を支えている

最初に大きな経済的影響を受けたのが、航空・旅行業界であり、現在通常時の70%~90%減の大幅な減便が行われている。しかしながら、航空機は旅客が誰もいない状態でも、航空貨物輸送を支えるために空を飛び続けている。これは大幅な減収下の航空会社にとって貴重な収入源ともなっている。航空輸送のキャパシティ不足に加えて、海上輸送では部品供給が間に合わないケースや医療物資などの緊急輸送の需要が増えていることにより、航空貨物運賃は通常時の約2倍の大幅な上昇が起こっている。この状況はグローバルの供給網の見直しや医療物資不足が落ち着くまでしばらくの間続く。

宅配事業にはプラスの影響も

次に大きな影響を受けたのが、休業を余儀なくされた小売・飲食業界であり、当然ながら店舗への物流がストップするなどの影響が出ている。その代わりに伸びているのがEC・宅配事業であり、テレワークによる在宅率の向上もプラスに寄与して、不在時の再配達率も大幅に減少するというメリットも出てきている。オンライン医療の開始に伴い、非対面で受け取れる処方薬の宅配もこれを機に一気に加速すると予想される。アマゾンもUSでは10万人を追加雇用するなど、失業者の雇用の受け皿にもなっている。

Withコロナ時代の物流業界における7つの変化(仮説)

今後のWithコロナ時代に、物流業界はどう変化していくのか、7つの変化の仮説を示したい。

①グローバル化したサプライチェーンが見直される(短~中期的)
グローバルで最適地から調達、最適地で生産、在庫は最小限に持つ、というサプライチェーンの見直しが起こる。人の移動制限がモノにも波及し、各国の保護主義的な動きが強まる。国内調達も含めた調達の分散化、国内生産への回帰、BCP的な観点が重要視され、安全在庫をより多く持つようになる。

②都市中心から地方分散型に(中~長期的)
都市中心の密集生活を避けるようになり、リモートワーク・オンライン教育・オンライン医療が当たり前になった世界では、感染リスクも社会コストも低い「地方」の価値が再認識され、人口が「都市」から「地方」に分散化されていく。それに伴い、サプライチェーンのネットワークも地方に分散化していく。

③ウィルスフリー物流(短~中期的)
モノに付着するウィルスを除菌・完全消毒することが新たな付加価値となる。ウィルスが増殖しにくい環境、クリーンルームのような空調換気システム等による保管・輸送モードが始まる。また、物流に携わっている倉庫のワーカーやドライバーが、ウィルスに感染していないか・ウィルス抗体を持っているかの認証が重要な顧客価値となり、安全・安心の品質基準が変わる。

④無人物流(中~長期的)
人が介在しないことが、感染リスクを抑える上での安心感を与える。無人倉庫が一層進展し、輸送も自動運転やロボットによるモノの受け渡しが浸透する。置き配がスタンダートとなり、むしろ非対面の受け渡しの方が好まれるようになる。3Dプリンティングが改めて見直され、普及期を迎える。

⑤タッチレス物流(短~中期的)
倉庫内や配送で人が介在する場合、感染リスクのあるモノやデバイスに触ることを極力避けるようになる。端末を音声認識で操作、IoTやICタグの価値が見直される。ボタンや画面などのタッチ操作もAR/VR/MRに代替され、タッチレスで空中を操作するデバイスに変わっていく。

⑥ペーパレス物流(短~中期的)
多くの人が触るような紙の受け渡しが敬遠されるようになる。送り状のデジタル化、船荷証券のデジタル化、ブロックチェーン等の技術を使い複数の業者が安全にアクセスできる基盤が整備される。紙中心のオペレーションのデジタル化が一層進む。

⑦キャッシュレス物流(短~中期的)
代引き等での紙幣・貨幣の受け渡しが敬遠されるようになる(紙幣に付着したウィルスは4日間生存するとの研究結果もある)。B2Cだけでなく、B2Bにおいてもキャッシュレス決済が一層進展する。

Hacobuのソリューションと提供価値

Hacobu Strategyでは、Withコロナ時代のサプライチェーンの見直し・最適化、ウィルスフリー物流・無人物流のコンサルティングを行います。(前述①~④の変化に対応)

トラック予約受付サービス「Movo Berth」、流通資材モニタリングサービス「MOVO Seek」、配送案件管理サービス「MOVO Vista」により、タッチレス・ペーパレス・キャッシュレス物流によるDX化を推進する仕組みを提供していきます。(前述⑤~⑦の変化に対応)

著者プロフィール / 野田和伸

株式会社Hacobu Executive Advisor。アクセンチュア株式会社において、24年以上のコンサルティング経験を有する。業務領域としては、営業・マーケティング・サプライチェーン・会計・人事・IT、クライアントの業界としては、自動車・消費財・小売・不動産・運輸・物流・旅行・人材サービス・通信・ハイテク等の幅広い業種を経験。最近7年間は運輸・物流・旅行業界統括マネジング・ディレクターとしてPL責任を担う。業界・企業を跨いだデジタル物流変革に共感し、株式会社Hacobuに参画。

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