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執筆者:佐藤 健次

倉庫スループットの最大化の出発点

スループットの最大化とは

ザ・ゴールという本はサプライチェーンの教科書として非常に有名な本である。そこではボトルネック行程を分析して、スループットを最大化することで工場が再生したことが書かれている。日本の工場では需要の変動に合わせながら、生産性を最大化を狙った生産計画というのは当たり前の考え方になっている。つまり、工業化した工場ではスループットの最大化ということを日々考えながら作業を実施されている。しかしながら物流の世界で、スループットの最大化という言葉を使う方々は少ない。入荷や出荷が大まかな時間単位になっており、作業計画を立てにくい環境にあるためではないかと考えている。

米国スーパーマーケットの例

米国大手スーパーマーケットの倉庫では、スループットの最大化のため、ボトルネックがどこにあるのかを常にモニターするインダストリアルエンジニアリングチームという部隊を持っている。大学などで専門の教育を受け、理系頭脳を持ち物流を数学でとらえるメンバーである。彼らは各工程の生産性を計測し、ボトルネック行程の生産性をあげるために、新しいプロセスへの変更やマテハン機器の調整・導入を行っている。それらの作業の中で重要視しているのが、荷物の入荷時間と出荷時間である。店舗出荷時間から逆算して、どのようなものが何時に入ってきて、その後どのような作業を加えて出荷してくかについて綿密な計画が立てられ実行されている。これらはWMSでコントロールされ、また人事システムと連携して、適切な人材のアサインメントがなされている。こうして倉庫のスループットの最大化を日々追求しているのである。これは、彼らが購買力を使って欲しいものを欲しい時間に正確に届けさせることから始まっている。場合によってはメーカーに生産計画の変更まで要求し、効率的な運用を実現しているのが実態である。

日本企業での適用

日本の流通倉庫で効率的なマネジメントを実現するためには、さらに高度なマネジメントが必要になるものと考えている。なぜなら日本で市場で上記企業ほどの購買力をもつプレーヤーは存在せず、メーカーの生産計画を変えられる力を持つ場合は少ないためである。結果として、日本では、流通倉庫の納品希望時間に対して、メーカー側の納品可能時間が確認し、流通倉庫側で作業時間の再設計が必要になる。

この作業は一見大変なように見えるが、基本納品パターンは週次で決まっていることが多いため、大きな季節動向の変化の際に1度行えば良い作業であり、それによりスループットが最大化できるので価値が大きな作業である。弊社の顧客では、これらにより入荷作業の効率が30%向上したという企業も出てきている。今、庫内作業のAutomationを検討している企業も多いと認識している。機械は予定通りに計画された動きをするため、庫内作業のAutomationの効果を最大化していくためには、その接点となる入荷と出荷の時間の厳格なマネジメントが今まで以上に重要になってくるのである。

すべては「見える化」から

すべての出発点は入荷時間、出荷時間の見える化である。改善点を見つけるという観点でデータを見れば、トラックの待機時間の問題だけではなく、入出荷量のブレによる手待ちの発生など見えてくるはずである。問題点がみえれば、改善は日本企業の得意とするところだと認識している。これもデジタルトランスフォーメーションと捉え、是非ともチャレンジしてもらいたい。

著者プロフィール / 佐藤 健次

Hacobu執行役員CSO。アクセンチュア株式会社において、サプライチェーングループのコンサルタントとして、数多くの改革プロジェクトをリード。その後、ウォルマートジャパン/⻄友にて、eCommerce SCM、補充事業、物流・輸送事業、BPR(全社構造 改革)の責任者を歴任。ウォルマートジャパン/⻄友の物流責任者として、各国のリーダーおよびパートナーと物流革新を推進。

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