物流が抱える課題とは?今後の動向と改善策について詳しく解説

物流は「経済の血流」と呼ばれるほど、物流が滞ることによって多くの人の生活に大きな影響を及ぼすであろう、社会的に欠かせない機能のひとつです。

2020年に国土交通省が発表した「物流を取り巻く動向について」によると、2017年度の運輸業界の営業収入は約38兆円であり、物流領域はそのうちの約24兆円を占める一大産業です。

出典:国土交通省 物流を取り巻く動向について

しかしその一方で、物流領域は多くの課題を抱えていることも現実です。特に、目前に迫っている物流「2024年問題」やトラック運転者の人手不足などは深刻な課題となっています。

本記事では、物流領域に関連する荷主企業及び物流事業の経営に携わっている方や物流センターの方に向けて、物流領域が抱える課題や解決策、今後の動向について詳しく解説いたします。

物流の現状

近年、新型コロナウイルス感染症の拡大やインターネットサービス、フリマアプリでの個人間のやり取りなどの増加によりEC市場は急激に活性化しており、それに比例して物流に関連する依頼も増加しています。

2022年に経済産業省・国土交通省・農林水産省が発表した資料によると、物販系分野のEC市場の規模は年々拡大傾向にあり、2021年には13.2兆円にも達しました。 それに伴って、宅配便の取扱件数は2016年からのわずか5年間で23.1%も増加しています。

上記は、2021年に日本自動車販売協会連合会が発表した「物流業界の現状と将来」の事業分野別市場規模をあらわした表です。2017年度のトラック運送事業の営業収入は約16兆円であり、物流事業全体のうち、約6割をトラック運送事業が占めていることが分かります。

※参考 我が国の物流を取り巻く現状と取り組み状況|経済産業省・国土交通省・農林水産省

※参考 物流業界の現状と将来

物流領域における5つの課題

さて、物流領域において、その市場は増加の一途を辿っていますが、この急激な市場の拡大によって”成長痛”ともいえる課題も浮き彫りになってきています。具体的に考えられる課題を5つあげてみました。

人手不足

少子高齢化に伴って労働人口全体が減少している中、特にトラック運転者が不足している要因のひとつが、全産業平均と比較し、長時間労働・低賃金であることです。

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、トラック運転者の年間労働時間は、大型トラック運転者が2,544時間、︎中小型トラック運転者が2,484時間で、 全産業平均の2,112時間と比較すると約2割も長くなっています。

一方で、トラック運転者の年間所得額は、大型トラック運転者で463万円、中小型トラック運転者で431万円と発表されており、全産業平均の489万円よりも0.5割〜1割ほど低い傾向にあります。 経営コンサルティングファームの「ボストン コンサルティング グループ」によると、2027年には日本のトラック運転者は24万人不足すると推計されており、その上2018年に成立した働き方改革関連法によって、2024年4月1日より以降、トラック運転者の時間外労働の上限が規制されることが決まっています。その影響により、更なる人手不足に陥るのではないかということが、物流2024年問題において懸念されています。

物流2024年問題については、「2024年問題 」の記事で詳しくご紹介しています。

参考記事:https://hacobu.jp/blog/archives/1305

輸送効率の悪化

前項で述べた長時間労働が懸念されている一方で、トラックの積載率は低下傾向で推移しており、2019年度には38%まで低下しています。

つまり、残りの約60%は空気を運んでいることになるので、積載率と輸送効率の改善が大きな課題です。また非効率な輸送による待機時間の問題も存在しています。1運行当たりの荷待ち時間(物流拠点到着から積込み・取卸しまでの待機時間)が2時間を超えるケースが全体の約3割と、トラックドライバーにとって無駄な拘束時間も長時間労働の要因のひとつとなっています。

他にも宅配業界では月に20万個以上の再配達が発生しており、これらも輸送効率の悪化につながり社会問題になっていると言えるでしょう。

輸送の小口化・多頻度化

国内貨物輸送量は、「重厚長大」から「軽薄短小」への産業構造の変化などによって、緩やかに減少してきました。昨今はECの宅配だけでなく、企業間物流や個人間でやり取りができるフリマアプリの普及も影響し、輸送の小口化・多頻度化が進んでいます。

小口化・多頻度化はいわゆる薄利多売になるわけで、それは従業員への負担が増えるだけでなく、管理コストや負担の増大にもつながってしまうことが課題でもあります。

CO2排出量の問題

近年、特に大きな課題となっているのがCO2排出量の問題です。

日本のCO2排出量に占める運輸セクターの比率は2割程度とされており、そのうち自動車輸送が半数以上を占めています。日本政府は環境規制への対応加速を打ち出し、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す方針を発表していますが、輸送の高頻度化、積載率の低下などを背景に改善が進んでいない状況です。今後はSDGsの視点からも、運輸セクターにおいて排出量削減に向けた対応がより一層求められるでしょう。

物流コストの上昇

輸送費の増加を主因に、荷主側における物流コストは2011年度以降増加傾向で推移しています。 需給環境を見れば、人手不足などを背景に今後も大幅な供給不足が続くと予測されている上に、物流事業者の労働環境改善に向けた取り組みの進展などもあり、今後も物流コストの増加は避け難いとみられます。

国土交通省は輸送トラックの多くが利用する高速道路の深夜割引の時間を「0時から4時」から「22時から翌5時」へと拡大する方針を打ち出しています。割引の適用を狙って深夜に発生するトラック待機の渋滞解消とドライバーの労働時間の改善が目的ですが、燃料費や労働費の増加等、物流コストが上がる要因になる可能性も考えられます。さらに、ウクライナ情勢などによる燃料の高騰や、増加傾向にある再配達も物流コストの上昇に大きな影響を及ぼしています。

物流課題の改善具体例

ここからは、物流における課題改善に効果的な具体例についてご紹介します。

労働条件の改善

トラック運転者の適正な<strong>労働時間と賃金の設定、休息時間の確保は、労働者のストレスを軽減し生産性と働きがいの向上につながります。良好な労働環境は、既存の労働者の離職率を低下させ長期的に働き続ける意欲を高めます。これにより、企業は経験豊富な人材を確保し続けることができ、人材育成や採用にかかるコストの削減にもつながります。

また、これまで物流領域においては男性が労働力の主体となってきました。そのため、女性の割合は全職業平均の1割未満と低い傾向にあるのが現状です。今後は、女性はもちろんのこと、若者や外国人などの雇用や参入を促進するための採用や働きやすい取り組みも大切です。

最適な配送ルートの見直し

AIとビッグデータを活用して最適な配送ルートを計算したり、需要予測を行い、在庫管理を最適化したりする取り組みは、輸送効率の改善につながります。 例えば、倉庫内のピッキング作業にロボットを使用したり、自動運転トラックやドローンを活用した配送を行う、ロボットや自動化技術を取り入れたりすることでも業務の効率化を図ることができます。さらに、輸送効率や業務効率の改善だけでなく輸送の小口化・多頻度化によって増加傾向にある管理コストの削減にも役立ちます。

また、トラックの配車や移動データなどを管理することができる 「TMSシステム(輸配送管理システム)」の活用も大きな効果があるといえるでしょう。

TMSシステムについては、「物流を効率化するTMS(輸配送管理システム)とは?機能や導入のメリットを解説 」の記事で詳しく解説しています。

共同配送

輸送の小口化・多頻度化には、複数の企業が協力して同一ルート上の荷物をまとめて運ぶことで、効率的に配送し、コストを削減することができる共同配送が取り組みのひとつとしてあげられます。

また、商品やサービスが最終的に顧客の手元に届くまでの最後の配送ステージを効率的に行う、ラストワンマイル配送の効率化もeコマースの拡大対策として効果があるといえるでしょう。

具体的には、ドローンや自動運転車を活用した配送や、置き配や宅配ボックスの設置、地域のコンビニエンスストアやロッカーと提携活用した受け取り場所の提供などがあげられます。

CO2排出量削減への対策

トヨタ、日野、いすゞによる商用トラックの電気自動車(EV)化や水素燃料電池車化(FCV)など脱炭素推進のための提携が大きく注目を集めています。配送車両でEVを採用する企業も増加傾向にあります。

アイドリングストップや自動運転等に代表されるように、適切な運転技術により燃費を向上させる「エコドライブ」も、取り組みのひとつだといえるでしょう。

また、CO2排出量削減の対策として、トラック輸送を鉄道輸送で代替するモーダルシフトや、トラックの待機時間削減、電気トラックやハイブリッド車などのクリーンエネルギー車の導入があげられます。

物流効率化に向けた政府の取り組み

現在、国土交通省や関係省庁が中心となり物流領域の課題の改善を目的に、トラックドライバーの働き方改革や物流の効率化などの様々な取り組みが行われています。

「ホワイト物流」推進運動

「ホワイト物流」推進運動とは、トラック運転者の人手不足問題を解決するために取り組む運動のことを指します。 国土交通省が主体となり、経済産業省、農林水産省と連携して取り組んでいる社会運動です。深刻化が続くトラック運転者不足に対応し、国民生活や産業活動に必要な物流を安定的に確保するとともに、経済の成長に寄与することを目的としています。

物流事業者、荷主企業、納品先企業等が運動に参加する「自主行動宣言」を提出することで、アクションを促そうとするものです。具体的には、予約受付システムの導入やパレットの活用、集荷先や配送先の集約などを行い、ドライバーの負担軽減を促す取り組みです。

「ホワイト物流」推進運動については、「「ホワイト物流」推進運動とは?目的、物流領域の課題や参加するメリットなどを解説 」の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

物流総合効率化法

物流総合効率化法は、流通業務(輸送、保管、荷さばき及び流通加工)を一体的に実施するとともに、「輸送網の集約」「モーダルシフト」「輸配送の共同化」などの輸送の合理化により、流通業務の効率化を図る事業に支援措置を定めた法律です。

2016年の改正では支援要件として「2以上のものが連携して総合化及び効率化を行うこと」が追加され、荷主と物流事業者の連携が促進されています。

具体的な支援措置としては、次の3点があげられます。

・事業立ち上げ、実施の際に、一部経費の補助や許可制度の優遇が受けられる ・事業に必要な施設や倉庫について、税制特例や規制に関する配慮を受けられる。 ・中小企業が取り組むとき、信用保険制度や貸付制度において優遇される。

物流総合効率化法については、以下のページで詳しく解説しています。https://hacobu.jp/blog/archives/1316#i-9

物流を効率化するには?政府が推奨する物流効率化の方法・事例などを紹介

トラックドライバーの働き方改革関連法

これまでは、トラックドライバーの時間外労働時間に上限値が設けられていませんでした。 しかし、近年推進されている働き方改革関連法が物流領域においても施行され、2024年4月1日より「年間960時間」を上限として規制されるようになります。月当たり80時間の時間外労働が認められているので、トラックドライバーが月20日出勤ならば「1日4時間」までの残業になる計算です。これによりトラックドライバーの長時間労働が抑制されます。

ライフスタイルの変化による物流への影響

新型コロナウイルスの流行は物流に大きな影響を及ぼしました。地上の国境制限や航空便の減少により、輸送ルートが妨げられ、物流の遅延や中断が発生しました。これにより、製品の供給遅れや在庫不足が発生し、生産企業や小売業者に多くの影響を及ぼしました。

また、感染リスクの警戒や移動制限により、物流業者は人手不足に悩まされました。ロックダウンや外出による制限、オンラインショッピングや宅配サービスの需要が急増したことへ対応するため、物流業者は配送ルートや配送スケジュールの見直し、迅速な配送体制の見直しを迫られました。

2023年5月より新型コロナウイルスは季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げることが決定しましたが、物流領域においては非接触・非対面を重視するニューノーマル時代の新たな行動様式の定着により、人が介入しない省人・自動オペレーションの需要は引き続き求められることが予想されます。

コロナ禍以降の物流における6つの変化(仮説)

前述のような行動変容を、長期的な「Withコロナ」と捉えて経済活動を再定義するチャンスと捉えるべきなのではないでしょうか。今後のWithコロナ時代において物流がどう変化していくことが考えられるのか、ここからは6つの変化の仮説をご紹介します。

1.都市中心から地方分散型に(中~長期的)

都市中心の密集生活を避けるようになり、リモートワーク・オンライン教育・オンライン医療が当たり前になった世界では、感染リスクも社会コストも低い「地方」の価値が再認識され、人口が「都市」から「地方」に分散化されていくことも予想されます。 それに伴い、サプライチェーンのネットワークも地方に分散化傾向になるといえます。

2.ウイルスフリー物流(短~中期的)

モノに付着するウイルスを除菌・完全消毒することが新たな付加価値となるでしょう。 ウイルスが増殖しにくい環境、クリーンルームのような空調換気システム等による保管・輸送モードが始まることが予想されます。また、物流に携わっている倉庫のワーカーやドライバーが、ウイルスに感染していないか・ウイルス抗体を持っているかの認証が重要な顧客価値となり、安全・安心の品質基準が変わるでしょう。

3.無人物流(中~長期的)

人が介在しないことが、感染リスクを抑える上での安心感を与えます。 無人倉庫が一層進展し、輸送も自動運転やロボットによるモノの受け渡しが浸透することも予想できます。置き配がスタンダートとなり、むしろ非対面の受け渡しの方が好まれるようになるでしょう。また、製品を輸送する従来の物流の流れを変える存在として、3Dプリンターに改めて注目が集まっており、普及期を迎えるとみられています。

4.タッチレス物流(短~中期的)

倉庫内や配送で人が介在する場合、感染リスクのあるモノやデバイスに触ることを極力避けるようになるでしょう。 端末を音声認識で操作、IoTやICタグの価値が見直されるようになります。ボタンや画面などのタッチ操作も、AR/VR/MRに代替され、タッチレスで空中を操作するデバイスに変わっていくことも予測できます。

5.ペーパレス物流(短~中期的)

多くの人が触るような紙の受け渡しが敬遠されるようになり、送り状のデジタル化、船荷証券のデジタル化、ブロックチェーンなどの技術を使った、複数の業者が安全にアクセスできる基盤が整備されることも予測できます。それによって、紙中心のオペレーションのデジタル化が一層進むといえるでしょう。

6.キャッシュレス物流(短~中期的)

紙幣に付着したウイルスが4日間生存する研究結果を受け、代引きなどでの紙幣・貨幣の受け渡しが敬遠されるようになります。 B2Cだけでなく、B2Bにおいてもキャッシュレス決済が一層進展することも予想できます。

Hacobuのソリューションと提供価値

物流が抱える様々な課題を解決するために、株式会社Hacobuで提供しているソリューションを大きく3つご紹介します。

トラック予約受付サービス 「MOVO Berth(ムーボ・バース)」

トラック予約受付サービスの「MOVO Berth(ムーボ・バース)」は、荷待ち時間の削減や、物流センターとトラック運転者のコミュニケーションの円滑化、物流現場の生産性向上を実現します。国内ドライバーの2人に1人が相当する42万人(※1)のドライバーが登録し、利用事業所数は1万拠点を突破、現在シェアNo. 1(※2)を誇るサービスです。

また、待機時間・作業時間・入退場車両などのデータの取得が可能なため、庫内業務の改善や全社の物流DXにも活用することが可能です。

トラック予約受付サービス 「MOVO Berth(ムーボ・バース)」

動態管理サービス 「MOVO Fleet(ムーボ・フリート)」

動態管理サービスの「MOVO Fleet(ムーボ・フリート)」は、5秒に1回のリアルタイム位置情報取得によって、正確に車両の現状を把握することができ、走行ルートや速度ログ、CO2排出量目安、着荷、停留など多角的なデータの蓄積を実現します。

取引先との情報共有や協力会社も含めた一括管理もできるため、データを用いた全社的な物流改革に活用いただくことが可能です。

動態管理サービス 「MOVO Fleet(ムーボ・フリート)」

配送案件管理サービス 「MOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)」

配送案件管理サービスの「MOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)」は、配車依頼から金額確認までを行うことができるため、協力会社への配車依頼業務を効率化が可能です。複数拠点での導入・活用することによって、本社では拠点横断でのデータの分析が可能となり、物流DXを促進するデータ活用にも役立ちます。

配送案件管理サービス 「MOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)」

物流の今後

トラック運転者の人手不足や輸送効率の悪化、進む脱炭素による環境規制への対応など、物流領域は様々な課題を抱えています。

また、今では収束しつつある新型コロナウイルスの流行を経て、物流を取り巻く環境は日々大きく変化しているといえるでしょう。今後は、新技術の活用に加え、物流業務のアウトソースの進展や異業種を含めたアライアンスによる業界再編のほか、物流ベンチャーの台頭など、業界構造が大幅に変化する可能性も想定されます。

しかし、物流はメーカーの物流部門、卸の物流部門、小売りの物流部門など、関与する企業が多岐にわたり、個社での改善には限界があるともいえます。商慣習の改善や規格の統一などといった、サプライチェーン全体の観点からの全体最適化を目指すためには、デジタルツールなどの最先端のシステムを導入することが重要です。

「MOVO(ムーボ)」は、SaaS型の物流管理ソリューションとして、待機時間でトラックを効率的に稼働させられない問題やトラックが手配しにくいという問題、そしてトラックの位置情報を把握できない問題などを解決するためのクラウドを提供しています。

SaaS型の物流管理ソリューションMOVO(ムーボ)

物流現場の課題を解決する物流DXツール「MOVO」の各サービス資料では、導入効果や費用について詳しくご紹介しています。また、MOVOの導入事例や物流に関するお役立ち資料もご用意しましたのでご活用ください。

各種資料は、こちらからダウンロードいただけます。

\物流課題を解決する糸口が見つかる!/

(※1)利用者がMOVO Berthを利用する際に登録するドライバー電話番号のID数の累計数

(※2)出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所,『スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2022年度版】』https://mic-r.co.jp/mr/02560/

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