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物流のBCP対策のポイントと事例

BCP, Business Continuity Plan. Concept with keywords, people and icons. Flat vector illustration. Isolated on white background.

物流BCPの必要性

豪雨、台風、豪雪、地震など毎年のように発生する自然災害は、サプライチェーンを分断し、暮らしや企業活動に大きな影響を与えています。
過去の災害では、長期間にわたって事業が休止したり、場合によっては廃業に追い込まれる企業もあるなど、企業にとって災害のリスク対策は急務となっています。
近年、自然災害による被害は拡大傾向にあり、今後も気候変動の影響により、水害などの災害が頻発することが懸念されます。

日本の自然災害発生件数及び被害額の推移

物流BCPを策定する目的

企業は災害からの早期復旧が求められ、そのための事前準備として「事業継続計画(BCP)」の策定が必要となっています。

事業継続計画とは「企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限に留めつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画」のことです。

東日本大震災を契機にBCPを策定する企業は増えていますが、それでもBCP策定率は荷主企業が57.3%、物流事業者が21.5%と決して高い数字ではありません。

物流業は、様々な災害下において、従業員とその家族の安全確保をしながらも、「経済の血流」として維持も求められます。
そのためにも、以下のような視点で荷主と物流事業者が協力しながらBCPを策定し、対策を進めていくことが不可欠です。

1.従業員とその家族の安全をいかに確保するか
2.緊急物資輸送など地域社会から求められる物流機能をいかに担うことができるか
3.自社の営業をいかに早期に開始し、できるだけ短期間で通常通りに戻すか。事業をいかに存続させるか
4.顧客企業やサプライヤーを含めた、サプライチェーン全体の物流システムをいかに早期に復旧できるか

物流BCP策定の基本

BCP策定にあたり、各関係団体から出されている策定ガイドラインは、非常に参考になります。

各関係団体から出されているBCPの策定ガイドライン

自然災害時における物流業のBCP作成ガイドライン(一般社団法人 日本物流団体連合会)
荷主と物流事業者が連携したBCP策定のためのガイドライン(国土交通省)
事業継続計画書(BCP)作成の手引き-大規模自然災害に備えるために-(一般社団法人 日本倉庫協会)
中小トラック運送事業者のためのリスク対策ガイドブック(公益財団法人 全日本トラック協会)

BCP策定のステップ

BCPのマニュアル策定は目的を明確にしてから策定した方がスムーズです。
マニュアルは荷主と物流事業者間で共有し、事前に災害対応について取り決めをしておきます。
①事業継続の体制を整備する
②目的を明確にする
③BCPの進め方を理解する
④想定するリスクを決める
⑤基本方針を決める
⑥中核事業の特定とその目標復旧時間を決める
⑦BCPマニュアルの作成
⑧BCPマニュアルの社内共有
⑨荷主、物流事業者間でBCPマニュアルの共有
⑩マニュアルに基づく訓練
⑪BCP維持のための体制づくり

BCP策定の基本

BCPマニュアルの構成例

・基本方針
 目的/基本方針/重要商品の選定
・想定被害把握
 人/物/情報/金
・対策
 発災直後の措置(避難方法/安否確認/被害把握方法/荷主
 物流事業者との連絡手段など)
 復旧手順
 防災対策、平時からの準備(人/物/情報/金)
・緊急時の体制
 緊急時の統括責任者/指揮系統
・BCPの運用方法
 見直しのルール

物流BCP策定のポイント

リスクの優先順位をつける(リスクマップ)

BCP策定のステップに従って取り組むのは大きな負荷がかかるのも事実です。上手く策定できそうにない、策定しても運用が大変そうだ、という場合は、以下のような視点でリスクを評価し、低減するリスク、回避するリスク、保有するリスク、対策が不要なリスクなど優先順位をつけてBCPの準備の検討をすることも有効です。
・発生頻度
・影響の大きさ
・関与者の多さなど
・自社のみで対策できるか否か

荷主が検討すべきポイント

代替輸送、代替施設の構築

平常時に使用しているトラックや道路等のインフラの被災による輸送力や輸送機能の低下により、代替輸送手段や代替輸送ルートが必要となることが想定されます。
また、各倉庫や物流センターの在庫量を把握しておき、被災した施設の代替施設において貨物の搬入・搬出等を実施できる体制を構築しておく必要があります。
そのため、物流事業者とともに、代替輸送、代替施設利用のための連携体制を整備する必要があります。平常時にハザードマップを確認するなど、輸送手段の決定方法を事前に取り決めておくことが重要です。

物流事業者確保のための関係構築

物流事業者が代替手段や代替輸送ルートを提案しやすい会議の場を設けるとともに、自らの目標復旧時間や最優先商品情報を物流事業者と共有するなどして、信頼関係の構築に努めることが望ましいでしょう。
物流施設を賃借して利用する荷主は、施設が被災した際の復旧手順や関係者の連絡体制などについて、施設管理者と事前に取り決めておく必要もあります。

3PL、運送会社が検討すべきポイント

従業員(ドライバー)の安全確保を最優先に考える

物流を止めないためのBCPは重要ですが、従業員の安全確保が最優先事項です。
ドライバーの安全確保が難しいことが予想される自然災害が発生したときに、輸配送業務をどうするかは、国土交通省が目安として公表した「異常気象時の輸送目安」が参考になります。
こうした情報を荷主と共有し、輸送停止のルールを事前に確認しておく、または代替手段を用意しておくと良いでしょう。

荷主が求める策定のポイントから考える

荷主が物流事業者に策定を求める項目は「輸送中の車両の位置情報の共有」、「道路等の交通インフラの情報収集」、「輸送中のドライバー等との連絡手段の確保」です。
これらの項目から優先的に対策を講じることも有効です。

出典)荷主と物流事業者が連携したBCP策定のためのガイドライン(国土交通省)

物流BCPに力を入れる企業の例

株式会社ブルボン

菓子メーカーのブルボンは、新潟、山形の生産工場、倉庫から全国11拠点の物流センターに商品共有を行っており、物流部門の配車担当が、物流事業者に輸送を依頼しています。
BCPの取り組みとして、発災時の生産工場、倉庫から全国11拠点の物流センターへの幹線輸送の代替ルートについて物流事業者と意思統一しています。 さらに物流事業者の他営業所や、遠方の同業物流事業社の応援、支援体制を構築しています。

株式会社メディパルホールディングス

医薬品卸のメディパルホールディングは、商品特性上、災害時は商品の安定供給に支障を来さないよう、さまざまなリスクを想定し、実効性のあるBCPを策定しています。
例えば、公共交通機関や交通網が寸断された場合に備え、物流センターなどに輸送の代替手段として緊急用バイクを配備しています。東日本大震災では、車両の通行が困難な場所に薬を届ける重要な配送手段となりました。

Hacobuが提供するLogistics Cloud MOVOのBCP活用についての事例は、以下をダウンロードください。

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