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「ホワイト物流」推進運動とは?目的、物流領域の課題や参加するメリットなどを解説

EC業界の急成長や少子高齢化といった社会背景は、日本経済にも大きな影響を及ぼしています。中でも物流への影響は大きく、トラック運転者の人手不足や高齢化は、大変深刻な状況にあるといっても過言ではありません。

物流「2024年問題」が目前に迫った今、物流領域に課せられている上記の課題を早急に解決すべきだ、と考えている方は多いのではないでしょうか。物流領域が抱えるこのような課題を解決するべく、国は「ホワイト物流」推進運動を呼びかけています。本記事では、物流領域に関連する荷主企業及び物流事業者の経営者様、事業部、物流センターの方々に向けて、「ホワイト物流」推進運動について詳しく解説します。

あわせて、「ホワイト物流」推進運動の取り組み事例などについてもご紹介しますので参考にしてみてください。

「ホワイト物流」推進運動とは

「ホワイト物流」推進運動とは、国土交通省が主体となりトラック運転者の人手不足問題を解決するために、経済産業省、農林水産省と連携して取り組んでいる社会運動です。深刻化が続くトラック運転者不足に対応し、国民生活や産業活動に必要な物流を安定的に確保するとともに、経済の成長に寄与することを目的としています。

「ホワイト物流」推進運動の主な柱に掲げられているのは以下の2つです。

・トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化 ・女性や60代以上の運転者等も働きやすい、より「ホワイト」な労働環境の実現

政府は、2019年5月13日に「ホワイト物流」推進運動への賛同表明の募集を開始し、同時に全国の上場企業など6,300社に対して参加要請文を送付しました。「ホワイト物流」推進運動ポータルサイトによると、令和5年5月31日時点で、1,625社の企業が「ホワイト物流」推進運動に賛同しており、その数は現在も急速に拡大しています。

参考:「ホワイト物流」推進運動のご案内と参加のお願い|2019年3月 国土交通省・経済産業省・農林水産省

「ホワイト物流」推進運動が求められる背景

「ホワイト物流」推進運動の「ホワイト」という言葉からも、これまでグレー、ないしはブラックな働き方が残っていた物流領域における働き方改革を意識したものであることは間違いありません。ここからは「ホワイト物流」推進運動が求められている背景について、具体的にご紹介します。

長時間労働で低賃金

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、トラック運転者の年間労働時間は以下のとおりです。

・大型トラック運転者:2,544時間 ・中小型トラック運転者:2,484時間

トラック運転者の年間労働時間は、全産業平均の2,112時間より大幅に上回っているのが現状です。長時間労働につながっている要因として、荷待ち時間や物流需要の増大、深刻な労働力不足などがあげられます。

また、厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によるとトラック運転者の年間所得額は、以下の通りです。

・大型トラック運転者:463万円

・中小型トラック運転者:431万円

全産業平均の年間所得額が489万円であるのに対し、トラック運転者は0.5割から1割ほど低い給与であることが明らかとなりました。この結果、長時間労働にもかかわらず賃金が低いという問題が浮き彫りになっています。さらに、荷物の積み込み・積み降ろしといった作業は肉体的な負担も大きいため、運転者の労働環境の改善は急務といえるでしょう。

トラック運転者の人手不足

「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」によると、ピーク時の1995年の980,000人から減少が続き、2015年は767,000人まで大幅に減少しています。2030年には2015年から3割減少することが既に予測されています。さらに、令和4年度9月のトラック運転者の有効求人倍率は2.12倍で、これは全職業平均の1.20倍を大幅に超える数値です。

これらの情報からも、トラック運転者に対する人手不足は非常に深刻な問題であるということが分かります。

参考:統計からみるトラック運転者の仕事 | 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト

トラック運転者の高齢化

トラック運転者の平均年齢は以下のとおりです。

・大型トラック運転者:49.9歳 ・中小型トラック:47.4歳

参考:統計からみるトラック運転者の仕事 | 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト

これらは全産業平均の43.4歳よりも6.5〜4歳高く、年々平均年齢は上がる傾向にあります。深刻なドライバー不足が続く中、定年退職したドライバーを再雇用するケースも増加しつつあります。 そこでどうしても懸念されるのが、「高齢ドライバーによる事故の増加」です。

AT大型車による交通死亡事故として記憶に新しいのは、神戸市の三ノ宮駅前で起きたバスによる事故ではないでしょうか。乗客を降ろした直後、バスが信号を無視して交差点に進入し、2名が犠牲になった同事故。バスドライバーは、定年退職後に再雇用された64歳で、「アクセルとブレーキを踏み間違えたかもしれない」と供述しているといいます。事故時の映像を見ると、スピードはそれほど出ていません。それでも死者が出たのは、AT大型車だったからという感が否めません。そもそも、もしあのバスがMT車だったら、あの事故は絶対に起きなかったはずなのです。

現在、運送企業には、雇用範囲を女性や高齢者に広げるべく、彼らでも安心してクルマを運転できるよう、比較的安易に操作できるAT車やAMT車を採用するところが増加しており、そんな企業の要望を受ける形でメーカーもAT・AMTトラックの開発・販売を活発化させています。中には、社内で保有している全てのMT車をAT車に変えた運送企業もあるほどです。

昨今のこうした重大事故の多発により、「高齢者はMT車に乗るべきだ」という風潮も強まる中、ATトラックを増そうとする物流領域では、企業による定期的な研修や社員教育が必須になってくるでしょう。

ここまでご紹介した、物流が抱える様々な課題を解決するためには、運送会社だけでなく貨物を出荷する側の荷主企業や、納品企業との協力が不可欠だといえます。これらの問題に対して、労働環境の改善と適正な労働条件を設定することで、物流を持続可能な産業として発展させようとする取り組みとして「ホワイト物流」推進運動が進められているのです。

「ホワイト物流」推進運動に取り組むメリット

国が呼びかけている「ホワイト物流」推進運動ですが、取り組むことによってどのようなメリットが得られるのでしょうか。 ここからは4つのメリットについて詳しくご紹介します。

労働環境改善による人材の定着

トラック運転者の適正な労働時間と賃金の設定、休息時間の確保は、労働者のストレスを軽減し生産性と働きがいの向上につながります。良好な労働環境は、既存の労働者の離職率を低下させ長期的に働き続ける意欲を高めます。これにより、企業は経験豊富な人材を確保し続けることができ、人材育成や採用にかかるコストの削減にもつながります。また、適正な労働時間と賃金、良好な労働環境が整備されている企業は、新しい労働力を引き付ける力も高め、他の業界と比較して著しく低いとされている女性トラック運転者の増加も見込めるため、トラック運転者の人手不足という課題を解決することにつながるでしょう。

業務プロセスの見直しによる生産性の向上

「ホワイト物流」推進運動における「生産性の向上」は、物流業務の効率化を通じて、同じ労働時間でより多くの成果を生むことを目指す概念です。これは労働者一人ひとりの働き方改革だけでなく、業務プロセスそのものの改善や、最新のテクノロジーの活用により実現されます。

例えば、トラック運転者が長時間労働となる要因のひとつである荷待ち時間は、納品先にトラック予約受付システムを導入してもらったり、バースの荷役予定時間を事前に設定したりすることで生産性を大幅にアップすることにもつながります。このように業務プロセスを見直すことは自社だけでなく、サプライチェーン全体の生産性向上につながるといっても過言ではありません。

二酸化炭素排出量の削減

業務の効率化によって、運行するトラックの台数が減少するため、二酸化炭素排出量の削減ができることもメリットのひとつとしてあげられます。

物流領域は大量の燃料を消費するため、CO2排出の大きな源となっています。これらの排出量を削減することで、地球温暖化とそれに伴う気候変動の緩和に貢献できます。「ホワイト物流」推進運動の取り組みのひとつとして、「トラックで行っている貨物輸送を鉄道や船舶などへ転換する」モーダルシフトという方法が注目されています。鉄道や船舶はトラックに比べて輸送効率が良く、一度に多くの貨物を運ぶことができるため、このモーダルシフトを活用することで二酸化炭素の排出量を減らすことが可能です。

企業イメージアップやSDGsの取り組みへの貢献

「ホワイト物流」推進運動に賛同すると、国土交通省から企業名が公表されます。この運動は、社会的な課題に対する企業の取り組みとして高く評価され企業のイメージアップや、働き方改革に積極的に取り組んでいる企業という印象から人材採用の促進にもつながります。

また、近年注目されているSDGsでは、労働環境の整備や女性の活躍の推進といった目標が定められています。「ホワイト物流」推進運動に賛同することによって、SDGsへの取り組みに貢献することにもつながるのです。

「MOVO(ムーボ)」は、SaaS型の物流管理ソリューションとして、待機時間でトラックを効率的に稼働させられない問題やトラックが手配しにくい問題、そしてトラックの位置情報を把握できない問題等を解決するためのクラウドを提供しています。

車両管理者やトラック運転者の負担を軽減することができる動態管理サービス「MOVO Fleet(ムーボ・フリート)」についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひこちらをご覧ください。

参加するには「自主行動宣言」を提出する

「ホワイト物流」推進運動に参加するには、「ホワイト物流」推進運動のホームページから自主行動宣言を提出することで登録が可能です。

参加手順は以下のとおりです。 STEP1:「自主行動宣言」の必須項目への賛同表明 STEP2:自社で+aで取り組む項目を選定 STEP3:自主行動宣言を作成し事務局に提出

自主行動宣言の必須項目である「取組方針」「法令遵守への配慮」「契約内容の明確化・遵守」に同意し、事務局へ提出する流れになっています。それぞれ指定のフォーマットが用意されているので、詳細については下記サイトをご確認ください。

参考:「ホワイト物流」推進運動への参加手順

ホワイト物流の取り組み事例をご紹介

ここでは、ホワイト物流の実現に向けて企業が行った具体的な取り組み事例を一部、ご紹介します。

トラック予約受付システムの導入

荷主や物流センター側でトラックの到着時刻が把握できていない場合、トラック運転者は長時間の待機を強いられることも起こり得るのです。

トラック予約受付システムとは、物流で使用される、荷受けや荷送りのスケジューリングを効率化するためのオンラインシステムです。このシステムは、輸送会社が荷物を受け取るためや配送するための予定時間を、荷主や倉庫側と共有することができます。このシステムを導入することで、荷待ち時間の削減や労働時間の最適化、コスト削減が可能となり、全体的な物流の効率化に寄与します。

食品製造業A社では、流通センターへの納品は到着順受付が基本ルールであったため、その順番を取るためにトラック運転者が必要以上に早く到着する傾向にありました。そこでトラック予約受付システムを導入し事前予約をすることによって、順番を取るための自主的な荷待ち時間を削減することに成功しました。

パレット積みの活用

トラックで貨物を運ぶ際、ダンボールをバラ積みにしていると、トラック運転者の作業の負荷が高まります。それに比例して、作業時間も長くなり、結果長時間労働にもつながります。 加工食品メーカーB社では、原則的に出荷する製品をパレット積みにすることにしました。

パレット積みとは、商品を平らな板(パレット)に積み上げ、そのパレットをフォークリフト等で運ぶ荷役方法のことです。これにより、個々の商品を手作業で運ぶ必要がなくなり、荷役作業の効率化や商品の損傷防止、作業員の負担軽減などが図れます。

さらに、荷受け側の倉庫でもパレットのまま保管できるよう、卸売業とも協議したうえで業界標準サイズのパレットを採用することによって、トラック運転者の作業時間を大きく削減することに成功しました。

船舶や鉄道へのモーダルシフト

モーダルシフトは、物流の生産性を向上する取り組みとして注目されています。 ニット機械製造・販売メーカーC社では、和歌山から神戸・大阪港への輸送をトラック輸送から内航開運へモーダルシフトすることで、トラック運転者の労働時間削減に成功しました。さらに、モーダルシフトによって輸送コストとCO2排出量の削減にもつながりました。

「ホワイト物流」の推進に役立つサービス

「ホワイト物流」推進に役立つサービスとして、株式会社Hacobuのサービスをご紹介します。

トラック予約受付サービス「MOVO Berth (ムーボ・バース)

ドライバーとセンターのコミュニケーションを円滑にすることで荷待ち・荷役作業時間を削減し、物流センター運営におけるコスト削減と生産性の向上が可能です。

トラック予約受付サービス|MOVO Berth (ムーボ・バース)

車両管理システム「MOVO Fleet(ムーボ・フリート)

自社はもちろん、協力会社も含めた車両の一括管理を実現し、取得データの活用で輸配送の課題を解決します。5秒に1回のリアルタイム位置情報取得により精緻に車両の状況把握をすることができるだけでなく、CO2排出量の可視化なども可能です。

動態管理サービス|MOVO Fleet(ムーボ・フリート)

配送案件管理サービス「MOVO Vista (ムーボ・ヴィスタ)」

電話・FAXベースの配車手配やアナログな配車組みをデジタル化し、業務効率化やデータ活用による物流コスト削減が可能です。

配送案件管理サービス|MOVO Vista (ムーボ・ヴィスタ)

「ホワイト物流」を推進しましょう!

物流2024年問題が目前に迫っている今、トラック運転者の労働環境を改善することは急務です。物流業務に携わるすべての関係者が、問題意識を持ち、業務の効率化や生産性を向上するために協力する姿勢が大切なのではないでしょうか。

物流領域には課題が山積しています。特に、30兆円市場と推計する「企業間物流」の人手不足は深刻です。2030年には、約35%の荷物が運べなくなるという試算もあります。

「MOVO(ムーボ)」は、SaaS型の物流管理ソリューションとして、物流領域における様々な課題を解決するためのクラウドを提供しています。

「荷待ち時間を削減したい」「業務のDXを進めたいが何から始めたらよいのか分からない」というご担当者様は、こちらのページをご確認ください。

物流DXツールMOVO(ムーボ)が、あなたの「運ぶ」を最適化します。

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